リゾート施設の経営再生

墓場・修羅場から、エリア1位のリゾート施設へ

※NDA締結により個人名・団体名を特定できない形でのご紹介となります。ご了承下さい。

ドラマ「半沢直樹」で、半沢直樹のお父さん(工場経営)が経営難のため、メインバンクである東京中央銀行の担当者(当時)の融資担当 大和田暁に雨の中土下座するシーンがあったのを覚えていますでしょうか。工場はボロボロ、従業員も解雇へ、融資が降りないと不渡りを出して経営破綻するという危機的な状況をドラマでは描写されていました。

M&Aや事業再生の案件を担当させていただくまでは、私の中ではこのようなことはドラマの中での絵空事でしたが、この案件を担当させていただいて、確かに現実にこのようなことが起きているのだなと実感しました。

経営破綻後の現場は悲惨です。たくさんの恨み・辛みの感情が飛び交う中で、事業計画を作成し、人員を整理し、マーケティングをし、経営効率化を図ります。並のメンタルの持ち主では、すぐにうつ病になってしまうくらい残酷な現場です。

リゾート施設の事業再生は2020年現在、4施設(神奈川県内2件・山梨県1件・長野県1件)を担当させていただきましたが、どの施設でも多くのことが共通します。

まずは資金繰りです。いまいくらあって、どれくらいの売上を出さないと経営が成り立たないのかをシミュレーションし、それにむけて融資を取り付け、経営計画を愚直に実行します。多くの施設は経営や営業のトレンドについていけず、KKD(勘・経験・度胸)でこれまで経営してきた会社が多いようです。このKKDも最後の最後では必要な場面も出てきますが、やはり数値的な裏付けをもとに経営は実行されるべきです。そうでないと、金融機関に融資を検討してもらえません。

次にコストカット。多くの破綻する会社は、世の中に跋扈する悪徳業者に騙されており、PL(損益計算書)の数値が悪化しています。不要なもの、オーバースペックなもの、効率化すればしのげるものなどを徹底的に整理して、カットします。それでも立ち行かない場合は、予め弁護士先生や関連する金融機関などと連携して、債務整理を行うこともあります。

人件費に関しても、整理が必要です。多くの破綻していく経営者の方々は、会社を潰してまででも従業員の雇用を守ろうとします。これは人道的には大変美しいことですが、会社は「存続させること」が社会的使命です。会社が存続していれば、そしてさらに元気になれば、新しい雇用も生まれます。解雇通告を出すのは心がはち切れそうになるくらい辛いことですが、相手のためを思って、今の会社に最大限何ができるのかをよく整理し、嫌なことから逃げずにきちんと向き合って話をします。場合によっては次の就職先なども斡旋して、適正な人員構成に持っていきます。

経営計画とマーケティングは、会社の血液です。これがないと、どんなに良い仕組み・よい人材が揃っていても、会社は破綻してしまいます。自分たちの強み(逆に弱み)は何なのか、地域で1位を取るためには何で秀でればよいのか、そのためにはどのような手段で営業・マーケティングをすべきかを考えます。考えただけでは何にもなりませんので、それらを実行に移します。マーケティングに必要な資材も、最初の資金が少ないうちは、自分たちで手を動かして作成します。

業務効率化も重要なポイントとなります。ITやインターネット・クラウド環境が発達した今では、みなさんそれらを十分に活用するはずと思ってしまいますが、アナログな方法で創業以来ずっと同じ方法を実行していたり、傍から見たらどうしてこんな非効率なことをやっているんだろう(こうすればもっと早く楽にできるのに)といったことが、大量に発見できます。これらを一つ一つ変えていきます。これは私のような外部の人間が旗振りをすればできることなのですが、実際に従業員として会社の中で働いていると、他の人の目や噂が気になったり、いじめにあったり、上司や同僚と対立したり…という従業員ならではの問題に直面することが多いようですので、なかなか会社内部のみで業務効率化を行うことは難しいのかもしれません。こういうときこそ、ぜひ外部の力を利用することで、物事が上手く回り始めることも数多くあります。これは、社員教育や評価制度なども取り入れると効率が上がるケースが多いです。

一度やって駄目だったからもうやらない、という経営者の方も多いようです。大切なのはここからで、どうして駄目だったのか、どうすれば上手くいくはずだったのかなどを検証し、再度実行します。これをよくPDCAサイクルと言いますが、マーケティングだけでなく、経営全般にこのPDCA(Plan-Do-Check-Action)のプロセスを取り入れて愚直に実行し続けている会社は、潰れることはまずありませんし、むしろ経営が上手く行きます。A-B法といい、AとBの手段を少ないサンプルで実行してみて、上手く行った方を大量に実行する、などという方法もあります。

よくよく考えると、当たり前のことを当たり前に実行する、だけの話なのですが、世の中はこの最も単純で簡単なことができにくいケースが多いのだと、現場に入るたびに痛感します。